オーストラリアでチップは必要?
海外旅行で直面するチップ(Tip)の問題。受けたサービスに対して、感謝の気持ちを表すために払うもので、心づけまたは寸志とされていますが、日本ではこうした習慣がないため、ちょっと面倒ですよね。
オーストラリアでは一般的にチップは不要、とされてきましたが、現在ではそうとばかりも言えない状況が生まれています。
しかも、ガイドブック等にも「原則不要だが、特別なサービスを受けた時等には渡す」と書かれていたりして、原則不要だとしても、どういう時に必要なのか?が、イマイチわかりにくい…。
そこで、実態が見えにくいオーストラリアにおけるチップについて、他国の旅行者や地元オージー達はどうしているのか?といった現状を交え、チップの傾向と対策を考えます!
海外旅行での一般的なチップの目安
ガイドブックなどに記載されている、海外旅行での一般的なチップの目安は、以下のように言われています。
- ポーターに荷物を運んでもらった場合、日本円にして100~200円程度
- ホテルのスタッフに特別に何かをしてもらった場合等、日本円にして100~200円程度
- ホテル等の宿泊施設では、毎日ピローチップ(枕銭)として、日本円にして100円~数百円程度
- レストランでは、総額の約10~15%程度
- タクシーは、総額の約10%程度
※チップは、TipではなくGratuity/グラチュイティーと記載されていることもあります。
枕の下にチップを置くのは日本人だけ?
日本からのツアー添乗員(もしくは現地係員)さんも「毎朝起きて出掛ける前に、ベッド1台ずつに対し、日本円にして100円~数百円程度を置いてください」と説明している上記2番目のピローチップ。ところが、このピローチップを置くのは日本人だけといっても過言ではないようです。
知人のイギリス人、アメリカ人、オーストラリア人に聞いても、いつも「置く」と答えた人はいませんでした。ただし、ある程度の高級な宿での滞在、もしくは、数日間など長く滞在する場合は、滞在日数に応じてチップを置くという人はいます。
では、どの程度の期間滞在すればチップを置くのかというと、その当たりの感覚は3日~1 週間以上等、人によってマチマチ。これらを鑑みると、(あくまでも個人的な意見ですが)パッケージツアー等で中級レベルの宿を利用し、滞在日数が1泊程度ならチップは必要ないのではと思います。
ちなみに、日本人旅行者は1晩しか滞在しなくても律儀にチップを置いてくれるので、日本人が泊まった部屋の掃除は、係の間で奪い合いになるという話もあるとか…。(事実かどうかはわかりません…)
レストランでのチップはどうする?
オーストラリアでは従来「チップ不要」とされてきましたが、シドニー五輪以降、そうとも言えない感じになってきました。
オリンピック目当てにやってくる観光客らからのチップを見込んでか、クレジットカードのスリップ用紙 (サインをするためのレシート状になった複写式の紙)に、Gratuity=チップの欄を設けたものが増えてきたのです。
都市部の店(テイクアウェイ等を除く)では、90%以上の確率でチップ欄のある用紙を使っています。このような状況に伴い、チップを置かないとマズいような雰囲気が漂うことも……。それまでは、クレジットカードの用紙にチップを記入する欄などなかったのに、近年急激に見かけるようになったため、地元オージー達も困惑しているよう。
こんな突然降って沸いたようなチップ問題に、地元のグルメ雑誌が以下のような見解を示していました。
チップを置くか、置かないか?それは面倒な事。私達はこう考えます。もし、食事の内容やサービスが平均点以上だったら、置く。クレジットカードに上乗せしてもいいが、できれば現金で。その場合は、およそ5~10%程度。あくまでも、食事料金の総額による。(原文は英語)
そして、「食事の内容やサービスが平均点以上であった」ことを踏まえて、さらに詳しくチップを置く基準を上げていました。
- もう一度来たいと思った場合、または、知り合いにもすすめたいと思うほどの店だった場合。
- その店に対する評価(料理もサービスもよかったこと)を態度で示し、店側に伝えたい場合。
私個人的には、キッチリ5~10%程度とはせずに、中級以上のレストランの場合、総額を切り上げてキリのいい額にする(つまり、A$96だった場合、ちょうどA$100にする)という方法をとっています。周囲を見ると、この方法をとっている人は結構多いようですので、ひとつの目安として覚えておくのもおすすめ。
とはいえ、1人当たりA$100を超えるような高級レストランの場合は、やはり10%程度が無難という人も多いようです。あくまでも任意で、ですが。
ちなみに、クレジットカードに上乗せしてチップを一緒に払う場合は、Gratuityの欄にチップ額を記入するか、合計欄にチップ込みの総額を記入するのがスマートです。また、オーストラリアでは休日にオープンしている店の場合、サーチャージ(休日営業特別料金)がかかるところがあります。これは、一般的に言われるサービス料とは異なるものですので、チップではありません。
タクシーやホテルのポーターへのチップはどうする?
オーストラリアでは、ホテルのポーターに荷物を運んでもらった場合でも、チップはとくに必要ないと考えますが、例えば、すごく重たい荷物だった場合、もしくは、荷物が多くて運ぶのに苦労するような場合は、私はチップを渡すべきだと考えています。実際、そのようにしているオージーも多いよう。
ですが、オージー達は上記のように自分で運べないような状況を除き、自分で運んでしまう人がほとんどなので、チップを渡すようなシチュエーションも生まれず、楽チン! この国では、「自分で荷物を運ぶのはチップをケチっていると思われ、恥ずかしい」という意識は、まったく無いようです。
タクシーのチップは、基本的には不要とされていますが、A$1以下もしくは1~2ドル程度のお釣りがある場合に、「お釣りはとっといて」という人は結構いるよう。また、長距離乗車した場合やホテルのポーター同様、重い荷物やたくさんの荷物の出し入れをしてもらった場合は、端数を切り上げるなどで、もう少し多め渡すのがスマートです。
オーストラリアも昔とはちょっと状況が変わってきていて、完全に『チップは不要』 とは言い切れなくなっているのはたしか。
ですが、この国では、「賃金が安く、チップがサービス業従事者の生活給となっている」というわけではないため、それほどこだわる必要はないと思います。
あくまでも“任意”で『感謝の気持ち』として、特別なシチュエーションの時のみ、『気持ち程度』を渡すものと考えていいと思います。もし忘れてしまっても全く問題ありませんので、深く考えずに気楽に構えて、楽しい旅行をしてくださいね!
注意)記載の情報/データは2010年9月時点のものです。
人工物よりも自然に魅せられ、6年半暮らしたロンドンからオーストラリアへ移住。トラベル・ジャーナリストとして各種メディアへの執筆、ラジオ/テレビ出演などで情報を発信しながら、メディア・コーディネーターや旅行情報サイトの運営も。目下の関心事は野生動物とエコ。シドニー在住20年以上。
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