忘れ去られた世界第二の渓谷 キャパティー・バレー :シドニーから行く小旅行
“世界最大の渓谷/峡谷(キャニオン)”と聞くと、思い浮かべるのは、アメリカの「グランド・キャニオン」?
たしかに、グランド・キャニオンの壮大さは圧巻です。でも、実は“世界最大”ではありません。
では、“世界最大の渓谷/峡谷”はどこにあるのでしょうか?
それは、チベットの「ツアンポー峡谷」だそうです。それでは、二番目に大きなキャニオンはどこにある?
…と思って探してみたら、なんとオーストラリアにありました!
オーストラリア最大かつ、世界で二番目に大きな渓谷
シドニーの北西約135km。世界遺産『グレーター・ブルーマウンテンズ地域』の一角に、世界第二の渓谷はあります。
『緑のグランド・キャニオン』とも呼ばれるブルーマウンテンズ。世界遺産に指定されたエリアは、なんと総面積86,200ヘクタールにもおよび、7つの国立公園を含む、広大な地域となっています。
その7つの国立公園のうちの「ウォレマイ国立公園」と「ガーデンズ・オブ・ストーン国立公園」に囲まれた渓谷が、世界第二のキャニオン「キャパティー・バレー」です。
キャパティー川が造りだした緑と砂岩の渓谷
アメリカの「グランド・キャニオン」は、平均の深さ1,200 m、最も深いところで1,828 m。長さ446 km、幅は最も広いところで29km。
「キャパティー・バレー」は、グランド・キャニオンより1 kmほど長く、幅も広いそうです。何千万年もかけてキャパティー川が削りだした渓谷は、深い緑に覆われ、ところどころに黄色がかった砂岩の岩壁をみせています。
ちなみに、世界一とされる「ツアンポー峡谷」は、平均の深さ4,876 m、最も深いところで6,009 m。長さ496 m。幅は最も広いところで240 km。その大きさは、群を抜いていますね。
忘れ去られた渓谷
「キャパティー・バレー」は、その昔、先住民アボリジニのウィランジュリ族が暮らしていました。
アボリジニの人々が追いやられた後、入植してきた西洋人によって、この地に眠るシェールオイルが発見され、採掘場として、多くの人々がこの地で暮らすようになり、大戦中はガソリンを製造していたそうです。しかし、生産量は乏しく、終戦と共に人々はこの地を去り、いまでは廃墟となっています。
冒頭にご紹介した通り、「キャパティー・バレー」も世界遺産エリアにあるのですが、大大的な宣伝もしていない上、ブルーマウンテンズの主要観光ポイントとなる「スリーシスターズ」や「ウェントワース滝」のある側ではないため、訪れる人はほとんどいません。
ですが、人間が去り、いまや手付かずとなった自然で育まれた豊かな生態系は素晴らしく、中でも野鳥の宝庫として、脚光を浴びつつあります。見られる鳥の種類も豊富で、他ではなかなか見られない珍しい野鳥たちがたくさん生息しているのです!
そんな類まれなる生態系に注目した国際環境NGO「バードライフ・インターナショナル」が、「キャパティー・バレー」を“重要な場所”に位置づけたため、いまや知る人ぞ知るバードウォッチング・スポットとなっています。
キャパティー・バレーへの行き方
シドニーから車で約3時間。ブルーマウンテンズの主要な町であるカトゥーンバを越え、リスゴーからキャパティー・バレーへの入口となるキャパティーの町まで約30分。そこから渓谷の最深部まで、約30分。公共の交通機関はありませんので、レンタカーなどを利用のこと。
シドニーから日帰りも可能ですが、キャパティーの町や渓谷へ続く道沿いにいくつかのB&Bやファームステイなどがありますし、ワイルドにいくな ら、キャンプという手も。ウォレマイ国立公園内にもキャンプ場があります。また、リスゴーの町にホテルやモーテル、B&Bなどたくさんの宿泊施設 がありますので、リスゴーに宿泊するのもおすすめです。
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注意)記載の情報/データは2014年4月時点のものです。
人工物よりも自然に魅せられ、6年半暮らしたロンドンからオーストラリアへ移住。トラベル・ジャーナリストとして各種メディアへの執筆、ラジオ/テレビ出演などで情報を発信しながら、メディア・コーディネーターや旅行情報サイトの運営も。目下の関心事は野生動物とエコ。シドニー在住20年以上。
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