カウラ桜まつり ~日本との縁深きオーストラリア内陸部の町でお花見
日本とは季節が逆のオーストラリア。日本が秋に向かう頃、オーストラリアは春。春といえば、桜の季節です!
春を告げる桜を愛でながら、日本文化に親しむお祭りが、シドニーの西、約320kmのところにあるカウラで開かれます。今年、2014年は、25回目となり、地元では春のファミリー・イベントとして、すっかり定着。そのお祭りの様子とカウラの町をレポートします!
その名も 「桜まつり」
カウラには、オーストラリア国内有数の日本庭園(ジャパニーズ・ガーデン)があります。このカウラ日本庭園がお祭りのメイン会場。
お祭りが開催されるようになった当初は、英語でCherry Blossom Festival と呼ばれていたこともあったのですが(一応、今も併記されてはいますが…)、今となってはもうすっかりSakura Matsuri(桜まつり)の名称が定着しました。
庭園内では、日本舞踊や雅楽の演奏、和太鼓や地元の空手クラブのパフォーマンス、習字や折り紙の講習会など、日本の伝統文化に触れるイベントも数多く催され、町は日本一色に染まります。
日本との繋がりは、カウラ日本兵集団脱走事件
カウラと日本を結ぶ深い繋がり…それは、第二次世界大戦時下に、ここに連合軍の捕虜収容所が造られ、そこに収容されていた日本兵500人以上が脱走したことで知られる 「カウラ事件=カウラ日本兵集団脱走事件 Cowra breakout」です。
捕虜収容所の脱走事件としては、史上最多と言われるカウラ事件。日本人231名、オーストラリア人4名の死者と、多数の負傷者を出しました。
その時、脱走した日本人捕虜へ、住民が食べ物をふるまったという話も残されています。こうした日本人と住民たちとの心温まる交流が語り継がれ、二度とこのような悲しい事件が起きて欲しくないとの思いから、町を挙げて「平和」を提唱していくことを誓ったのだそうです。
そして、このカウラ事件をきかっけに日本への関心が高まり、また、事件の犠牲者への追悼の意を込めて、本格的な回遊式日本庭園となる「カウラ日本庭園 Cowra Japanese Garden」が造られました。
オーストラリアにある小さな日本領
現在、カウラ日本庭園と捕虜収容所跡を結ぶ一本道は、桜アベニュー Sakura Avenueと名付けられ、その辺りから約5kmに渡って、約2000本もの日本桜が植えられた並木道となっています。また、近くには、事件での犠牲者および収容所に収監された抑留者など、この地で亡くなった日本人が眠る「日本人墓地 Japanese War Cemetery」があります。
この日本人墓地は、1963年にオーストラリア政府によって、日本に譲渡され、現在は、日本国の領土ということになっています。(ただし、オーストラリア戦争墓地委員会の管理下にあるため、日本の主権が及ぶ領土ではないとのこと)
そんな悲しい歴史を踏まえながら、今 では日本との繋がりを誇りに思う人々の、日本への関心の高さをうかがわせる町を挙げてのイベントが、この「桜まつり」なのです。
ワイン産地としても注目のカウラ
カウラは近年、ワイン産地としても注目の的!周辺ではフルーツなどの栽培も盛んです。地元の人たちと桜を愛でながら、上質なローカルワインと産地ならではの多彩なグルメに舌鼓――
また、カウラはオーストラリアのアウトバックともいえる内陸部に位置しているため、沿岸部とはまた違ったカラフルなインコやオウムなど、珍しい野鳥もいっぱい!知られざるバードウォッチング・スポットともいえます。
カウラは、そんなオーストラリアの田舎のよさを味わえる、魅力的なカントリー・タウンなのです。
カウラへの行き方と宿泊
カウラへはシドニーから車で西へ約320km、約4時間。直接乗り入れている公共の交通機関はありませんので、レンタカーを借りるのが最もポピュラーです。飛行機を利用する場合は、シドニーから運行している地方路線で、オレンジ、パークス、バサースト、または、オーストラリア国内主要都市からキャンベラへ入り、そこからレンタカーなどで移動となります。
宿泊施設は、カウラの市内中心部とその周辺に、ホテルやモーテル、キャラバンパークなどがあります。
カウラのホテルはこちらで探せます。
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■カウラ日本庭園&文化センター Cowra Japanese Garden and Cultural Centre
住所:Ken Nakajima Place, Cowra NSW
電話: +61 2 6341 2233
※桜まつりは、毎年9月の末頃、桜が咲く春の季節の土曜日に開催されます。
注意)記載の情報/データは2014年9月時点のものです。
人工物よりも自然に魅せられ、6年半暮らしたロンドンからオーストラリアへ移住。トラベル・ジャーナリストとして各種メディアへの執筆、ラジオ/テレビ出演などで情報を発信しながら、メディア・コーディネーターや旅行情報サイトの運営も。目下の関心事は野生動物とエコ。シドニー在住20年以上。
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