ウルル(エアーズロック)に登るということ

 
オーストラリアの世界遺産の中でも1、2を争う人気のウルル(エアーズロック)。言わずと知れた『世界最大級の一枚岩』です。

その観光のハイライトにもなっているのが、ウルルへの登山。ですが、登山口には「ウルルに登らないでください」という看板が掲げられています。登山が禁止されているわけではないのに、登らないように、というそのワケは?

今回は、日本人観光客にも人気の「ウルルに登る」ということについて、考えてみたいと思います。

 
<UP DATE: 2017年11月付け> 2017年11月1日に「2019年10月26日をもって、登山全面禁止」が決定しました。詳細はこちら。⇒ 2019年に、ウルル(エアーズロック)登山禁止へ!

 

「ウルルに登らないでください」という看板が問いかけること

「ウルルに登らないで!」と書かれた看板

ウルルへ旅する!となった時、おそらくほとんどの人が、ウルルへ登るのを楽しみにしているのではないかと思います。日本の旅行会社でもウルル観光の紹介として以下のように記載しているところがあるほど。

最大傾斜45℃の急斜面を途中鎖を使いながら昇るウルル(エアーズロック)の登山は往復2~3時間かかります。頂上からは360℃のパノラマ眺望がお楽しみいただけます。

しかし、登山口には、「We don’t Climb, Please Don’t Climb Uluru(私たちはウルルに登りません。どうか、ウルルに登らないでください)」という看板が… (このメッセージの内容はこちらで読めます

これは、この地の伝統的な所有者であるアボリジニの人々からのメッセージ。ときには、自ら看板の前に立ち、観光客に登らないよう訴える姿も見られます。

彼らは、観光客がウルルにこぞって登っていることをよく思っていません。この場所は、彼らにとっては聖地。昔から大切にしてきた場所ですので、「荒さないで!」という気持ちが強いのです。また、彼らの主張の中にもあるように、登頂を目指した何人もの人が命を落としているのも事実。ウルルの岩肌は、滑りやすく、危険であることも確かなのです。

また、ウルルへ登ることについては、これまでも、何度となく「禁止される」という話題があがり、現在も禁止にする方向で、アボリジニの人々とオーストラリア政府の話し合いが続けられています。

そうすると、「近々禁止になるらしいから、今のうちに登っておいたほうがいいよ!」といったメッセージを発信する人が現れたり…

日本国内の聖地と呼ばれるような場所や神社仏閣に、海外から観光客が大勢やってきて、日本の慣習を無視して、どかどかと踏み荒らして行ったらどう感じるでしょうか? アボリジニの人々の心情に、ぜひ、思いを馳せてみてください。

 

 登山を禁止にしないわけ

ウルル登山に関する豪シドニーモーニングヘラルド2013年6月の記事

※上記はウルル登山に関する豪シドニーモーニングヘラルド2013年6月の記事ですが、リンクが切れてしまったので豪ABCの記事を以下にリンクします。
The message is clear: please don’t climb Uluru

 
「そんなに登って欲しくないなら、完全に禁止すればいい」といった意見も聞かれます。

しかし、アボリジニの人々が、ウルル登山を完全に禁止しないのは、「各自の良心に基づいて、聖地としてのウルルに敬意を払い、登ることを選択しない=登らない人であって欲しい」という願いが込められているから。一方的な宣告で登山できない状態を作り出すのではなく、訪問者それぞれが、各自の良心に基づいて、最良の選択をして欲しい、ということなのです。

ウルルの周りにはトレッキングコースが整備されている。この彼らの「人々の良心に任せる」やり方を10年以上続けてきた結果、それまでウルル訪問者のほとんどの人(90%以上)が登っていたのですが、2012年には、実際に登ったのは20%まで減ってきたそうです。

また、「彼らだって観光客が払う入場料で収入を得ているから、禁止にしないのだろう」という声もあります。これについては、ウルルの入場料は、国立公園への入場料であ り、ウルルへの登山料ではないこと。そして、入場料の全額が彼らの収入になるわけではないということを理解する必要があります。

とはいえ、今のところまだ「禁止」ではありませんので、「登る」という選択肢が残されているわけですから、「登ってはいけない」という権利は誰にもありません。ですが、こうした事情を踏まえた上で『ウルル登山の是非』について考え、ウルルに行った時には、各自の良心に基づいて行動してもらえたらと思います。

 

ウルル登山が禁止される時

ウルルはサンライズとサンセットが見もの!

現在は、まだ登ることができますが、どちらにしても、以下のような状況下においては、ウルル登山は禁止となります。

  • icon-exclamation-circle 強風時(標高2500フィート地点で、風速25ノット以上)
  • icon-exclamation-circle 雨が降っている時または、降った後
  • icon-exclamation-circle 3時間以内に雨、または嵐が予想される時
  • icon-exclamation-circle 気温が36℃以上の時(予報も含む)
  • icon-exclamation-circle 雲が頂上より下にある時
  • icon-exclamation-circle 救助活動が行われている時
  • icon-exclamation-circle 伝統的な所有者から文化的な理由で要請があった時(過去には、種族の長老が無くなった時に閉鎖等)

★登らなくても、ビューポイントからの眺めも素晴らしいですし、周囲のトレッキングコースを歩いたり、最近ではラクダでの散策やアボリジニの文化と歴史を学ぶツアーなども数多く催行されています。ぜひ、いろいろな角度からウルルを堪能してみてください!

無料のアクティビティ紹介記事はこちら有料だけど他ではできない体験ができるアクティビティやツアーの紹介記事はこちらです

注意)記載の情報/データは2014年2月時点のものです。

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この記事を書いた人
Miki Hirano平野 美紀 icon-link icon-twitter icon-facebook icon-google-plus
人工物よりも自然に魅せられ、6年半暮らしたロンドンからオーストラリアへ移住。トラベル・ジャーナリストとして各種メディアへの執筆、ラジオ/テレビ出演などで情報を発信しながら、メディア・コーディネーターや旅行情報サイトの運営も。目下の関心事は野生動物とエコ。シドニー在住20年以上。
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ウェーブ・プランニング:  1998年からオーストラリア情報を発信し続け、取材先件数は5,000ヶ所以上。オーストラリアに関する取材や撮影などのメディア・コーディネート、取材代行などをしています。本拠地はシドニー。 ★メディア・コーディネート、取材代行、執筆・撮影依頼等、承ります。こちらまでお気軽にお問い合わせください。