2019年に、ウルル(エアーズロック)登山禁止へ!

 
これまでにも何度となく「禁止」の可能性が伝えられていたウルル(エアーズロック)への登頂。
昨日11月1日、2019年10月26日に正式に禁止されることが、ウルル-カタジュタ国立公園管理局から発表されました。

長い議論を経て、正式に禁止を決定した経緯と、これまで行ってきた地元アボリジニの人たちの「登らないで!」というキャンペーンの成果について再考し、日本人のウルル観光のあり方を考えてみたいと思います。

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ウルルに登ることを正式に禁止した経緯

「登らないで」と書かれた看板に足を止める観光客
「登らないで」と書かれた看板に足を止める観光客

もうかなり前から(少なくとも2001年以前から)ウルルの登山口には「登らないでください」という看板が掲げられていました。

英語だけでなく、フランス語、ドイツ語、イタリア語、スペイン語、中国語、そして日本語などの各国語で掲載されたこの看板。西洋人観光客のほとんどは一旦、看板の前で足を止め、読んでいました。

その結果、その昔はほとんどの観光客が登っていたのが、2012年には20%近くまで減ってきたといいます。

実は、これまでも何度となく「禁止にするか否か」が議論されてきたウルル登山。ウルル-カタジュタ国立公園を管理マネージメントする理事会(主要メンバーは地元アボリジニの人が大半を占める)では、2010年の会議で、観光業界との協議の上、新しい訪問者(観光客)が(ウルルに登らなくても)ここでの体験に満足していると確信でき、この場所を訪れる重要なファクターとなる文化的で自然を体験できるアクティビティやツアーなどが提供され、登山者の割合が全観光客数の20%を下回った場合には、禁止にすることが盛り込まれていました。

先日、これらの3つの基準が満たされたと判断され、理事会の満場一致で正式に決定。また、理事会では2010年に、観光業界へ配慮し、禁止にする際には少なくとも18ヶ月の猶予を持たせることも取り決められていたため、2019年10月26日をもって、正式に禁止とすることが宣言されたというわけです。

ちなみに、10月26日は、1985年のこの日に、西洋からの入植者によって奪われていたこの土地が、本来の所有者である地元アボリジニの人々へ返還された記念すべき日でもあります。

この決定の詳細は以下の公式リリースで読むことができます。

【公式リリース】Uluru climb to close in 2019

 

「登らないで!」と言っても、登る日本人

ウルル登山に一石を投じた2004年の記事 ※クリックで拡大
ウルル登山に一石を投じた2004年の記事 ※クリックで拡大
私は2004年に、こうした現地の事情を大手ポータルサイト内で記事にして公開し、2014年にもこのサイトで「ウルル(エアーズロック)に登るということ」と題した記事を再掲して、ウルル登山について考え直して欲しいと伝えてきました。
ですが、残念ながら、登る日本人は絶えませんでした…

この記事を読んでくれたのか、地元アボリジニの人々が快く思っていないと知って、登るのを止めたという人もいらっしゃいましたが、この事実を知ってもなお、

私含め友達3人と、「アボリジニのみなさんごめんなさいごめんなさい(;_:)」と言いながらウルルの岩を登ることを決意しました。

なんて人も、、、、orz

現地の英語ツアーに参加した人は、こんなことを漏らしていました。

日本人にはエアーズロックに登ることを目的にツアーが組まれ、一方、それ以外のツアーでは「ここは聖地だから登らないように」「この大切な聖地に登るのは日本人だけだ」と言われる。・・(中略)・・ちなみに、アボリジニアートの展示があった場所では「私はエアーズロックには登りません」という宣言にサインするノートまで用意されていました。(参照

登山口からは毎日無料のガイドツアーが催行されているが、参加しているのは西洋人がほとんど
登山口からは毎日無料のガイドツアーが催行されているが、参加しているのは西洋人がほとんど

登っているのは日本人だけじゃないだろう?という声も聞こえそうですが、近年、登っている人のほとんどは日本人を含むアジア人ばかり…といっても過言ではない状態でした。

オーストラリアの地元紙をはじめ、英語圏の新聞各社は「登るのは日本人が多い」「登る日本人はドイツ人に比べて4倍もいる」などとかなり限定的に書いていますし、国立オーストラリア大学の調査でも83%の日本人観光客が登る/登ったと回答したとありますので、日本人がとくに目につくのは、多くの人が感じているところなのでしょう。(参照1, 参照2, 参照3

その昔は約90%の観光客が登っていたけれど、最近は20%まで減っていたというウルル登山。その20%の中のほとんどが日本人だったら・・・相当残念な話です。。。

なぜ、こんなことになってしまったのでしょうか?

 

ウルル登山が組み込まれたツアーとWiki日本語ページの罪

ウルルに登ることをウリにしたツアーの数々
ウルルに登ることをウリにしたツアーの数々

日本のウルルのツアーのウリ文句に、必ずといっていいほど記載されている「ウルル登山」。
中には、ツアースケジュールの〇日目に「ウルルのサンライズと登山観光」として、しっかりツアーの一環として組み込まれているものも…

これでは、登ることを推奨しているというか、登ってください!といわんばかり。

ほとんどの大手旅行会社がこのような状態では、地元アボリジニの人々が快く思っていないという事実を知ることは困難かもしれません…

※本日11月2日にざっと調べたところ、某社だけは「※アボリジニはウルル(エアーズロック)の登頂を推奨していません。」と、小さくですが記載していました。大きく書いて欲しかった!

また、残念なことに、現地の事情を解りやすく説明できる日本語ガイドもほとんどいません。

そして、ほとんどの西洋人が足を止める「登らないでください!」の看板も、日本人はほぼ全員がスルー。付き添いのガイドさんも説明してはいませんでした。(2015年にも確認)

地元アボリジニの人々の作品を展示販売しているギャラリー
地元アボリジニの人々の作品を展示販売しているギャラリー

さらに問題なのは、日本語でウルルについて書かれたWiki。

以下に問題部分を引用しますが、地元アボリジニの人々が、国立公園の入場料や土地のリース料で生計を立てているために登山を禁止しないかのような印象を受けかねない内容になっています。

アボリジニの間では一部の祭司以外は登山が認められていなかったが、オーストラリア政府と旅行会社によってウルルの観光開発が行われ、オーストラリア政府はリース料とウルル=カタ・ジュタ国立公園入場料の一部を支払っている。・・(中略)・・しかし、リース料などの観光収入はアボリジニの貴重な収入源となっているため、観光客による登山を仕方なく認めている現状がある。(参照

確かに、この土地は、本来の所有者=アボリジニ部族からオーストラリア政府へリースされていますが、国立公園内でレンジャーやガイドとして働くアボリジニの人々は、普通に公務員としての給料を貰っているにすぎません。

国立公園以外では、唯一の町であるユララのエアーズロックリゾート内で、アボリジニ文化を体験できるツアーガイドとして勤務したり、アボリジニの若者らが観光業界で働けるよう支援するアカデミーが独自のカフェを運営するなどして、アボリジニの人々の働く場を提供していますので、事実とかけ離れたあのような記載は誤解のもと。

それに、実際のところ、登山道は土地を奪った西洋人が勝手に作ってしまったものであり、これまで登山が認められてきたのは、長年にわたって西洋人に奪われていた土地をアボリジニの人々へ返還すると政府が決めた1983年に、返還の条件として、政府への99年リースと共に登山を閉鎖しないことがセットにされたためです。つまり、登山させないと返さない!という条件を飲まされたから。

また、海外のメディアは、これまでもウルル登山禁止の話が持ち上がる度に、積極的に「ウルルに登るべきではない理由」といったような記事を掲載してきましたが、日本のメディアでそのような記事を掲載したところがあったでしょうか?

 

ウルルと地元の人たちに敬意を

ウルル周辺ではバードウォッチングも楽しい!
ウルル周辺ではバードウォッチングも楽しい!

ともあれ、正式に禁止となる2019年10月26日まで、まだしばらく時間がありますので、「聖地だから登らないようにと言っているのに、登るのは日本人だけ」などと言われないよう、慎みを持って、他者への尊厳を大切にした行動を心掛けたいものです。

ウルル周辺では、登山以外にも様々なアクティビティが体験できます。無料のものもたくさんあるので、ぜひ、参加してみてください!

ウルル満喫アクティビティ-無料編
ウルル満喫アクティビティ-有料編

※「登れなくなるので、お早めに!」といったような煽り言説が出てこないことを祈るばかりです…

注意)記載の情報/データは2017年11月2日時点のものです。

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この記事を書いた人
Miki Hirano平野 美紀 icon-link icon-twitter icon-facebook icon-google-plus
人工物よりも自然に魅せられ、6年半暮らしたロンドンからオーストラリアへ移住。トラベル・ジャーナリストとして各種メディアへの執筆、ラジオ/テレビ出演などで情報を発信しながら、メディア・コーディネーターや旅行情報サイトの運営も。目下の関心事は野生動物とエコ。シドニー在住18年。
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Wave Planning Pty Ltd.

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