宮崎アニメの舞台を旅する!
その数ある作品の中に登場する風景が、オーストラリア各地で見られるという、まことしやかな噂があります。よほどのファンが探し回った結果なのか、とくかく驚くほどたくさんの宮崎アニメと関連付けされた場所がオーストラリアに点在しているのです。
この噂、オーストラリア在住の日本人の間、とりわけワーホリ(ワーキングホリデーで滞在している若者)の間では、かなり有名で伝説のように語り継がれているほど。最初はただ単に「似ている」というだけだったのが、何人もの間で語り継がれていくうちに「ココがモデルだ!」となったのかもしれません。
ただ、実際訪れてみると「たしかに似ている…」とは思います。
そんなわけで、ここでご紹介するのは、あくまでも『在豪日本人の間で噂になっている』ということであって、宮崎氏もしくはスタジオジブリさんが「ここです!」と言ったわけではありません。でも、もしかしたら、何らかのヒントになったかも?と思いながら訪ねてみると、なんだか本当に「もしかしたら、ここかも!?」と思えてくるところばかり。
モデルになったのか?そうではないのか?
どちらにしても、皆の胸に残る数々の名場面を容易に想像できる場所をワクワクしながら訪ねるというのも、夢があってなかなか素敵な旅になるんじゃないかと思うわけです。
そこで、その「宮崎アニメのモデルでは?」と噂される場所を一挙にご紹介!
これを読んだら、あなたも今すぐ映像をチェックしてみてください。もしかしたら、新たな発見があるかもしれませんよ。
<ご注意>あくまでも『噂』であることを了解した方のみ、読み進んでください。よって記載内容に関する異論、反論、批判は受け付けておりませんのであしからず。
魔女の宅急便
なんといっても一番人気かつ、かなり信憑性の高いのがこの「魔女の宅急便」に登場するキキのパン屋さん。主人公の魔女・キキの冒険と旅立ちを描いたこの作品は、角野栄子氏の原作を宮崎駿氏が脚色監督したもので、老若男女問わずファンが多い宮崎アニメのひとつですよね。
このアニメの主人公キキが働くパン屋さんにそっくりなベーカリーが、タスマニアにあるのです!
それは、タスマニアの州都ホバートからロンセストンへ向かう途中にある小さな町「ロス」の小さなベーカリー「Ross Village Bakery」。キキはパン屋さんの屋根裏部屋に住み込んで働くことになりますが、驚くことにこのベーカリーにも上階に宿泊できる部屋があるのです。
このロス・ビレッジ・ベーカリーは、パン屋さんとB&B(ベッド・アンド・ブレックファストという日本のペンションのような簡易宿泊施設)を経営しており、主な客室は隣に建つ別棟にあるのですが、1部屋だけ、パン屋になっている母屋の上階、つまり屋根裏に客室があるのです。ただ単に屋根裏部屋になっているというだけでなく、トイレが外にあったりするところまで、アニメに登場するキキの部屋そっくり!
また、このパン屋さん以外に、キキがホウキにまたがって空を飛ぶシーンで、上空から見た町の風景がホバートに似ている(ただし、これはスタジオジブリの公式サイトによると、大いに参考にした場所として「スウェーデンのストックホルム」が挙げられています)とか、物語の最初の方でキキが雨の中で飛び乗る列車は、オーストラリア横断特急「インディアンパシフィック号」で、到着した街はメルボルンがモデルではないか?という噂もあります。
確かにメルボルンには、キキがひかれそうになった「トラム」が走っていますし、その場面に登場する時計台がメルボルンのシンボルともいえる「フリンダースストリート駅の時計台」に似ているような気がします。
さらに、キキとトンボが乗った飛行船が時計台引っかかるシーンで登場する時計台は、「アデレード中央郵便局」がモデルではないか?という噂もあるほど。たしかにそう思って見ると、どれも似ているような…。
▼ロス・ベーカリー・イン(英語)
▼タスマニア観光局(英語)
▼メルボルン・ビクトリア州政府観光局
▼アデレード・南オーストラリア州政府観光局(英語)
紅の豚
なぜか豚になってしまった元空軍のエース、深紅の飛行艇を自由自在に操る通称『ポルコ・ロッソ=紅の豚』が、賞金稼ぎのために空賊と戦い、空中戦を繰り広げる…というストーリーのこの物語。そして、その舞台は、第1次世界大戦後のイタリア。
…ということになっています。これは、スタジオジブリの公式サイトでも、ここが、舞台といえるものとして「アドリア海とその周辺」と発表されています。では、そんな『紅の豚』のどこがオーストラリアと関係があるのでしょうか?
まずそのひとつが、ポルコが乗っている深紅の飛行艇。この赤い飛行機はオーストラリアで、よく見かけられる「タイガーモス」 という飛行機がヒントになっているのではないかと言われています。ケアンズやシドニーなどでは、赤いタイガーモスで遊覧飛行するツアーがあるほど。(ただしこのポルコの飛行艇は、サボイアS.21戦闘飛行艇という機種だそうで、タイガーモス機ではありません)
そして、ポルコが戦う相手である空賊は水上飛行機を操っていますが、この「水上飛行機」もシドニーをはじめとするオーストラリアの海岸沿いなら、どこでもたく さん飛んでおり、頻繁に目にすることができるのです!
さらに最も信憑性が高いのが、ポルコの隠れ家ともいえるビーチの風景。飛行艇に乗って飛び立つシーンでよく登場している海岸に、かなり目立つ形の岩がそそり立っています。この風景が、メルボルンからの観光地としてお馴染みの“グレートオーシャンロード” の「ロンドンブリッジ」、または、「ロックアードゴージ」と呼ばれる奇岩にそっくり!
さらに、ポルコが出入りしているバーによく似たパブが、この“グレートオーシャンロード” 沿いの“ポートキャンベル”という町にあるという噂も…。
たしかに、建物などはヨーロッパの街並み、とりわけイタリアのアドリア海あたりの風景を再現しているといって間違いないと思いますが、海岸はああいった感じではなかった気がするのですが…。真相はいかに?
風の谷のナウシカ
この物語は、舞台設定が“未来”というか“世紀末”のようになっているので、どこというわけではないのですが、このタイトルそのもの“風の谷”という場所が、オーストラリア中央部のウルル-カタジュタ国立公園にあります。
その名もまさに「風の谷(Valley of the Winds)」。
ウルル(エアーズロック)と共に世界遺産になっているカタジュタ(マウントオルガ)にあるのですが、Valley of the Windsは、日本語に訳せば「風の谷」ということになりますよね。これは、ネーミングのヒントになったのでしょうか?
そう思いながら作品を見ると、物語の中の戦争シーンで登場する荒れ果てて荒涼とした風景も、どこか砂漠地帯のこのエリアと似ているような気がしてきませんか?
天空の城ラピュタ
空から降って来た少女シータと彼女を助けた少年パズーが、シータの持っていた“飛行石”の神秘的な輝きに導かれ、天空に浮かぶ伝説の城ラピュタに足を踏み入れる…という物語。
まず物語の中で、洞窟の中で“飛行石”がキラキラと光輝く印象的なシーンがありますが、これがゴールドコーストからのツアーで人気の「土ボタル(ツチボタル)」がモデルではないか?といわれています。また、この物語のキーワードである、神秘的な輝きを放つ“飛行石”そのものが、オーストラリアの特産物である「オパール」がヒントになっているのではないかという噂も。
さらに、『紅の豚』のところでご紹介した飛行艇タイガーモスが、ここでは空中海賊ドーラ一家の母船の名称「タイガーモス号」として登場しています。
また、この物語の主人公パズーは、鉱山で働いている設定になっていますが、オーストラリアは鉱山王国といえるほど、数多くの鉱山があります。そしてそのひとつ、クイーンズランド州の内陸にある鉱山町“マウントアイザ”が、この物語の舞台になっているのではないかともいわれています。
そして、ラピュタのある浮島の中で登場する森林の風景は、植物の蔦の絡まり方などが熱帯雨林の樹木の特徴そのもの。そんな熱帯雨林も、ケアンズなどがあるクイーンズランド州北部に広がっています。
そして、伝説の城ラピュタに似た建物もあるのです!
作品に登場する伝説の城ラピュタは、植物が絡まった石の建物でしたが、このエリアにある「パロネラパーク」という古い邸宅もまた、同様に熱帯雨林特有の植物が絡まり、朽ちた石の建物なのです。
そんなことからか、同エリアのアサートン高原にある「カーテン・フィグツリー」と呼ばれる木は、日本人の間では“ラピュタの木”とも呼ばれているようです。
▼スプリングブルック・ツチボタル調査センター(英語)
▼マウント・アイザ(英語)
▼パロネラパーク(英語)
▼アサートン高原観光局(英語)
★ケアンズのホテル価格比較
★ゴールドコーストのホテル価格比較
となりのトトロ
トトロ・ファンならご存知だと思いますが、トトロの舞台は言わずと知れた1930年代の日本。モデルとされた場所は、所沢の狭山丘陵(現在はその作品にあやかって“トトロの森”と呼ばれている)だと、スタジオジブリ公式サイトでも公表されています。
なのに、オーストラリアにはその作品のヒントになったのではないか?と言われる数々のものが存在しているのです!
まずひとつは、トトロそのもの。ユーモラスな太っちょ体型とあの風貌。この一見妙なキャラクター、一体何がモデルになったのでしょうか? あのキャラクターを作る時にヒントになったのでは?と噂されるものが、西オーストラリア州のダービーという田舎町にあるのです。
それは、ワーホリ達の間では“トトロの木”と呼ばれているボアブ・ツリー(バオバブの木)のひとつ「Prison Tree」。たしかに、その体型(木型?)がトトロにそっくり! そして、その顔つきと体型がよく似たものといえば……、オーストラリア固有の動物「ウォンバット」。う~んたしかに似ていると言えなくもないような。ちょっと微妙ではありますが(苦笑)。
そしてもうひとつ、物語の核になっている“ねこバス”。これは、パース市内を走る循環無料バス「CAT」が、そのモデルではないかと言われています。確かにその名の通り、そのまま訳せば“ねこバス”。さらに、CATバスには、ねこのイラストが描かれているのですから、こんな噂が立つのも無理はないのかもしれませんね。
▼ダービー観光局(英語)
▼パース・西オーストラリア州政府観光局
もののけ姫
森を守る山犬一族と鉄を作るために森を切り拓く人間達との、果てしなき戦いが描かれた「もののけ姫」。
山犬に育てられた人間の少女サン、そして、「タタリガミ」に呪いをかけられた少年アシタカが主人公として登場します。物語の森は“シシ神の森”と呼ばれ、人間達は森を支配する神“シシ神”を殺そうとするのですが……。
このシシ神の森は、木々が山を抱くように生い茂る手付かずの原生林。こうした森はオーストラリアのいたるところにありますが、その中に、サンが暮らす山犬の家とされる洞穴状の岩場にそっくりなところが、ビクトリア州にあるのです!
それは、メルボルンから約250kmほど北西に位置するグランピアンズ国立公園内のビューポイント「ザ・バルコニー」といわれる岩。周囲には鬱蒼とした原生林が広がり、口を開けたように2つに分かれている岩場の様子は、たしかに犬神の家そっくり!
「いやいや、もののけ姫に登場する森はオーストラリアじゃなくて、屋久島でしょう」と言われるかもしれません。たしかに、スタジオジブリ公式サイトでも、大いに参考にした場所として「屋久島、白神山地」と公表されています。でも、グランピアンズ国立公園の「ザ・バルコニー」を見たら、誰しもきっと「似てる!」と思うはず。ぜひ自分の目で確かめてみてください!
▼グランピアンズ国立公園(英語)
ルパン3世カリオストロの城
これも宮崎アニメのひとつですが、このカリオストロの城のモデルでは?と噂なのが、タスマニアの州都ホバートからほど近い「ポートアーサー流刑場跡」。
砂岩で作られた黄色味がかった建物が、どこか似ていなくもない… ですが、これはちょっとこじつけっぽい。
それとも、ある角度から見ると似ているとか? 内部のどこかが似ているのかも??
少なくともパッと見の外観は似ていないように思います。
DVDのジャケットを見る限り、(外観の色味がちょっと違いますけど)モデルはおそらくドイツのロマンティック街道にあるノイシュヴァインシュタイン城(左写真)じゃないかと個人的には思うのですが、皆さんはどう思われますか?
▼ポートアーサー(英語)
未来少年コナン
アメリカの作家アレクサンダー・ケイ氏の『The Incredible Tide』というのが原作だそうで、この作品が宮崎アニメの原点とも言われています。
この作品の中には、西オーストラリア・パースからのツアーとして人気の観光名所「ピナクルズ」が登場しているといわれています。
私自身、この作品を見ていたはずなのですが、何分昔のことゆえ、残念ながらあまりよく覚えていないのです……。ファンの人で「見たよ!」という人がいましたら、是非お知らせください。またこれから見てみようという人は、注意しながら見てくださいね。
▼ピナクルズ-ナンバン国立公園(英語)
…というわけで、数々の宮崎アニメ作品と共に、その舞台・モデルでは?と噂の地をご紹介してきましたが、これらが本当にモデルになったのか否か、真相は謎のまま。でも、それでいいのです。「ここかも!?」と思いながら探す旅って、ステキじゃないですか! 皆さんも是非、もう一度DVDなどを見直して、そしてアニメのシーンを頭の中に焼き付けて、オーストラリアへ旅立ってくださいね。
注意)記載の情報/データは2010年8月時点のものです。
人工物よりも自然に魅せられ、6年半暮らしたロンドンからオーストラリアへ移住。トラベル・ジャーナリストとして各種メディアへの執筆、ラジオ/テレビ出演などで情報を発信しながら、メディア・コーディネーターや旅行情報サイトの運営も。目下の関心事は野生動物とエコ。シドニー在住20年以上。
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