カンガルー島は元気です!Part 2 ~森林火災の実際の被害状況とコアラの現状と未来

2020年1月3日に、大規模な森林火災の被害を受け、深刻なダメージを受けたカンガルー島。

Part 1では、最新の情報をお伝えしましたが、被害の程度はどれくらいだったのか?また、全国のコアラ・ファンが一番心配している(と思われる)カンガルー島のコアラたちはどうなってしまったのか?と、気にかけてくれている方も多いことと思います。

そこで、カンガルー島における実際の被害状況とコアラたちの現状と今後についてまとめました。

 

カンガルー島の実際の被害状況

2020/1/30時点の火災エリア・マップ
2020/1/30時点の火災エリア・マップ

カンガルー島では、12月20日に島の北西部で発生した落雷により、最初の火災が起こりました。1月3日にはかねてからの少雨(旱魃)と暑さで、火の勢いは強さを増すばかりで、延焼を止めることがままならず、火災エリアが拡大。最終的に、440,500ヘクタールの島全体の半分弱=約48% に当たる211,255ヘクタールを焼失しました。

主な町への延焼は必至の消防活動により免れたものの、町から離れた場所に点在していた家屋を含む、89戸の住宅と296棟の建物が全焼。2名の死者が出るという最悪の事態に…。また、オーストラリア国内最高級のリゾートとして世界中から注目されていた「サザン・オーシャン・ロッジ」も全焼しました。

 
最も被害が大きかったのが、島西部のほとんどを占めていた「フリンダース・チェイス国立公園」です。ここは、野生のコアラの生息地としても知られ、また、国立公園に隣接して多くのユーカリ・プランテーションがありました。そのため、コアラをはじめとする野生動物の島内最大の生息地となっていたのですが、動物たちは、この火災で棲み処のほとんどを失う結果となってしまいました。

また、カンガルー島は畜産業も盛んだったのですが、飼育されていた家畜への被害は甚大で、少なくとも43,000頭が犠牲になったと発表されています。

真っ黒の炭状態になった木(2020/1/29撮影)
真っ黒の炭状態になった木(2020/1/29撮影)

野生動物の被害はさらに甚大です。コアラについては後述しますが、この島にしか生息していない希少な固有種が今回の火災で絶滅したかもしれないとも言われています。

中でも心配されているのが、ネズミくらいの大きさの小さな有袋類「カンガルー・アイランド・ダナート」。まだ詳細は確認されていません…

そして、本土では絶滅してしまった種の亜種である黒オウムの一種「カンガルー・アイランド・グロッシー・コカトゥー(カンガルー島テリクロオウム)」は、完全に絶滅したわけではないけれど、相当な数が焼死したとみられ、個体数は激減。その上、棲み処と餌場となる松林がほとんど焼けてしまったため、これからどうしたらいいのか…という状況に追い込まれています。

 

カンガルー島のコアラの現状と今後

手当てが終わったコアラ。すべての四肢に包帯を巻かれた姿が痛々しい。(2020/1/29撮影)
手当てが終わったコアラ。すべての四肢に包帯を巻かれた姿が痛々しい。(2020/1/29撮影)

 
日本でも大きく報道され、このままでは絶滅してしまう!という声も聞かれるコアラ。

カンガルー島では、島内の半分のコアラが焼死したのではないかと言われており、事実を確かめるべく、島内のコアラ事情を把握するワイルドライフ・パークのオーナーにお話を聞きました。

オーナー曰く、「だいたい5万頭いたと推測されるが、2.5万頭くらいが焼死したとみられる」とのこと。
注)一部の専門家の間では 2.5~3万頭弱という推測もありますが、まだ、しっかりとした調査は入っていませんので、実態は不明です。

それでも、火傷を追っていても生き残ったり、火災で親とはぐれたりしたコアラたちが、続々と仮設のコアラ病院に運ばれてきているそうです。

 
カンガルー島には早くからオーストラリア防衛軍が支援に入り、コアラを中心とする仮設の動物病院を造ってくれましたので、救助された動物たちはそこで手厚い治療と看護が行われ、状態がよくなるとワイルドライフ・パークへ移動させ、現在は、様子を見ているといった状況です。

野生へ戻せるまでの間は、こうした人間によるケアが欠かせない状態ではありますが、悲惨な状況の中でも少しずつ、被災していない一部の森へ戻すことができている個体もあるようです。

 

コアラという種の存続の鍵を握る不安定な要因

 
今回、実際に現地へ足を運んでみてわかったのは、島内の個体数が半減してしまったというだけでなく、コアラの将来にとってもうひとつ、若干の懸念材料があるという事実です。

カンガルー島のコアラは、本土で蔓延し、深刻化するコアラ・クラミジアに感染していない大きな個体群であったため、コアラの将来にとって重要な位置づけでもありました。

しかし、このコアラ・クラミジア感染がないということも手伝い、カンガルー島内では爆発的に個体数が増えていたため、避妊手術を施していたというのです…

これが、今回の火災で個体数が約半減してしまったことで、どのように影響を及ぼすのかは、まだわかっていません。

 

生き残ったコアラの未来

 
今回の火災で、最も大きな懸念でもある喫緊の課題は、焼失した森に生き残ったコアラがいたとしても、食べるものがないため、餓死してしまう恐れです。

これは、上述の通り、西側の国立公園をはじめとする森林地帯の被害が最も酷く、コアラの生息地の約8割が焼失してしまったため。

黒く焼けてしまった森にコアラの食べるものはありません…
しかも焼けてしまったエリアは広大で、どこかに生き残ったコアラがいたとしても、探しだすのも一苦労…

これについては、現在も根気よく、生き残ったコアラの捜索が続けられていることに加え、島内の東部などから集めたユーカリを水の入った筒にいれた“フィーディング・ステーショーン(動物園などにあるコアラの餌場)”を焼けた森に設置するという、地道な作業が行われています。

こうした多くのボランティアたちの必死の活動で、今でもまだほぼ毎日のように救出されたコアラが病院や保護センターへと運ばれています。まだまだ助かる命があるのです!

救助されたコアラたちは、火傷の痛みや軽度の呼吸器疾患にも耐え、がんばっています。半分目を閉じたまま、ふらふらしながらも、一生懸命与えられたユーカリの葉を食べようとするその姿には、生きたい!という気持ちが表れているようでした。

 

長期にわたる支援の必要性

救助されたカンガルー島に生息するカンガルー・アイランド・カンガルーの赤ちゃん(2020/1/29撮影)
救助されたカンガルー島に生息するカンガルー・アイランド・カンガルーの赤ちゃん(2020/1/29撮影)

今回、現場を訪れてみて痛感したことは、今後、コアラたちが棲める森が回復するまで、人間が手を差し伸べ、食いつないであげる必要があるということ。それ以外にコアラたちが生き延びられるすべはないでしょう。

森林火災が収束しても、棲み処を失った動物たちにとっては、長い長い闘いが続きます。

どうぞこれからも、コアラをはじめとするオーストラリアの野生動物たちを忘れずに見守り、支援してください。そして、近い将来、再び元気になった動物たちが、以前のような豊かさを取り戻した森でのびのびと暮らす様子をぜひ見に来てください!

 
 
※カンガルー島にはもともとコアラは生息しておらず、1920年代に観光目的でビクトリア州から移入された18頭のコアラがこの島の環境に適応し、その後、爆発的に増加。近年はその過密状態が問題視されていた…というのも事実です。ですが、今回の火災で約半分となってしまったカンガルー島のコアラたちには、なんとか頑張ってほしいと心から願うばかりです。

 

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カンガルー島へ渡る本土側のお店にはボランティア消防士たちへの募金箱が設置されている(2020/1/29撮影)
カンガルー島へ渡る本土側のお店にはボランティア消防士たちへの募金箱が設置されている(2020/1/29撮影)

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注意)記載の情報/データは2020年2月17日時点のものです。

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この記事を書いた人
Miki Hirano平野 美紀 icon-link icon-twitter icon-facebook icon-google-plus
人工物よりも自然に魅せられ、6年半暮らしたロンドンからオーストラリアへ移住。トラベル・ジャーナリストとして各種メディアへの執筆、ラジオ/テレビ出演などで情報を発信しながら、メディア・コーディネーターや旅行情報サイトの運営も。目下の関心事は野生動物とエコ。シドニー在住20年以上。
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ウェーブ・プランニング:  1998年からオーストラリア情報を発信し続け、取材先件数は5,000ヶ所以上。オーストラリアに関する取材や撮影などのメディア・コーディネート、取材代行などをしています。本拠地はシドニー。 ★メディア・コーディネート、取材代行、執筆・撮影依頼等、承ります。こちらまでお気軽にお問い合わせください。